購入編

不動産会社悪しき慣習 囲い込み

「囲い込み」は、大手不動産仲介会社で横行している慣習です。
これは、『不動産仲介会社が、自社で両手で成約させるために、他社経由のお客様に紹介させずに、情報を囲い込む行為』を言います。

まず、「両手」が何を意味するかご説明します。

両手取引とは

不動産会社が売却の依頼を受けると、売主様と不動産会社との間で媒介契約を締結します。
媒介契約には種類があるのですが、多くが「専任」又は「専属専任」という形態の媒介契約となっています。(これも問題と思っていますが、別ブログで解説します。)

このような媒介契約の場合、不動産会社には「レインズ」という不動産会社だけが見ることができるデータベースに登録が義務付けられています。仕組みは下記のとおりです。

例えば、××不動産がある物件の売却依頼を専任媒介で受けたとします。
××不動産はレインズに登録をします。レインズに登録されると、他社の不動産会社がこの物件が売りに出されたことを知ることができます。
ここで、B社が紹介した「買主様B」で成約となった場合、××不動産は売主様から仲介手数料を受領できます。これを「片手取引」といいます。
(買主様Bの仲介手数料はB社が受領します。この場合、××不動産とB社の共同仲介で取引が成立します。)

ところが、××不動産の紹介先である「買主様A」で成約となった場合、××不動産は売主様、買主様Aの双方から仲介手数料を受領できます。これを「両手取引」といいます。

仲介手数料は「成約価格×3%+6万円(税別)」が上限金額となっており、この額で進めることが多いです。仮に5,000万円の物件の場合、156万円(税別)が仲介手数料となります。

つまり、××不動産は、同じ一件の取引で、片手取引の場合は156万円、両手取引の場合は312万円の仲介手数料となるわけです。なお、××不動産の手間は片手取引であろうと、両手取引であろうと、大して変わりません。この差って大きいですよね。

「囲い込み」とは、上記の例でいうと、××不動産が自社で両手成約をするために、他社(B社~D社)に紹介させずに、買主様Aが現れるまで待ち、両手取引を成立させるような行為を言います。

ここで、『レインズに登録義務があるのだから、情報は公開されているんじゃないの??』という疑問がでてくるでしょう。答えは簡単です。他社から××不動産に問い合わせても、『商談中なので紹介不可です』と嘘をついて断るのです。そうして、両手成約できるチャンスを待つ。

売主様からしたら、××不動産の都合で情報を制限され、不当に時間をかけさせられ、場合によっては安い金額に落ち込んでしまうことさえあるでしょう。これは立派な不法行為です。

『中小の会社はそんな酷いことをしているのか。やはり信頼できる大手に依頼しよう』と思われるかもしれませんが、とんでもありません。これを行っているのはむしろ大手不動産会社の方が多いのです。

囲い込みの実態

昔は本当に当たり前のように行われていた「囲い込み」は、2015年にダイヤモンドで取り上げられて社会問題になり、2016年に規制強化がされています。
このときに、「公開中」なのか「書面による申込み有」なのか、レインズに登録することが、不動産会社に義務付けられました。そして、それは売主様も自身で確認できるようになりました。

そのため、規制強化前よりも、「囲い込み」が減ったことは事実です。しかし、当時の社会問題は時を経てすっかりと意識が薄れました。様々な理由を付けて、他社に紹介させない手法(嘘)が横行しています。



<ケース1>
内見予約をしようとして××不動産に連絡しても、担当者不在。
何度電話しても折り返しをもらえず、気が付いたら契約予定になっている。

<ケース2>
内見予約をしようとしたが、『鍵をまだ預かっていない。鍵は3週間後に預かることになっている』と言われ、3週間後には契約予定になっている。

典型的なのはこのようなケースです。
この程度の嘘の真偽の確かめようがありませんので、泣き寝入りするしかないのです。

物件を買うときはどうすれば良い?

結論は、「専任媒介」又は「専属専任媒介」で依頼を受けている業者に内見を依頼することが、最も良い方法です。

倫理的には納得がいきませんが、どの不動産会社も「両手取引」を優先します。つまり、窓口となっている不動産会社に依頼しないと、多くの場合、不利になります。インターネットには「専任かどうか」の記載は無いかもしれませんので、本当に欲しい物件があれば、問い合わせて聞いてみた方が良いです。

ところが一方で、不動産取引は窓口になる担当者の手腕・知識・誠実さ等により、大きくブレることがあります。レベルの低い担当者に当たった場合、「トラブルになる」「思わぬデメリットが後になってから見つかる」「想定していなかった出費(税金等)が生じる」等の可能性が増えます。金額が大きいだけに、このような事態は避けたいですよね。

なのでもし、既に信頼できる営業マンと出会っているのであれば、一旦はその営業マン経由でお願いをしてみましょう。その上で、囲い込みの気配を感じたら、窓口となっている不動産会社に連絡をしてみたら良いと思います。

近年、大手不動産会社は、保守的な傾向にありますので、コンプライアンスには敏感です。(そもそも囲い込みを止めてほしい、と思いますが、業界では当たり前の光景なので、麻痺しているのです。)
そのため、囲い込みを行っているであろう不動産会社のお客様相談窓口や、物件を担当している店舗のトップに連絡をすれば、相手は腰が引けた対応をしてくる可能性が高いと想定されます。(つまり、囲い込みを突かれると「やばい」と思って、情報をオープンにしてくれます)。

やはり、信頼できる担当者に頼みたいですよね。なので、その担当者とよく相談しながら、対応を考えましょう。

最後に

上記でも言及しましたが、不動産業界には「囲い込み」を当たり前としていた慣習があります。規制強化前は、何カ月も何カ月も、『お話入ってまーす』と言って他社に紹介させない、ということがザラにありました。そして、会社もそれを是としてきたのです。

そのため、良い物件の売却依頼を受けて、「片手取引」になろうものなら、会社から白い目で見られます。片手取引になった営業マンも、これをとても格好悪いことだと思っているので、居心地が悪くなります。それを避けるために、囲い込む。これが当たり前でした。

今でもその慣習を引きずっているのが実態です。上記の例のようなことを営業マンが行ったとしても、咎められるようなことは殆どありません。むしろ上手く両手取引に持っていって、褒められるくらいの感覚ではないでしょうか。

2025年から、国土交通省の厳格な取り締まりの実施が予定されているようです。
悪しき慣習からの脱却を、期待しています。

ではまた。