購入編

借地権はお得なの?

借地権とは

借地権とは、土地の賃借権です。
お金(地代)を払って土地を利用する権利のことを言います。
大別すると、「借地権」と「定期借地権」があります。
違いは「更新できるか、できないか」です。

借地権は、借地借家法という法律で借地人が保護されています。
そのため、原則、期間が満了したとしても、地主側に正当事由が無い限り、土地を明け渡す必要はありません。
建物が現存する限り、土地を継続して利用することができますし、建物を建て替えることも可能です。

一方で、定期借地権は契約期間満了後、土地を地主に明け渡さなければなりません。
更新は不可で、地主の正当事由も必要ありません。

当然ですが、借地権は所有権と比較して価格が安いです。
物件を探しているときに金額だけ目について、『おっ、安いなこの物件』と思ってよく見ると、土地権利が借地権だったりします。

よく『借地権ってことは土地はタダで、建物を売っているということ?』と質問されますが、そうではありません。
借地権は土地の利用権であり、市場価値があり、売買もできます。
では所有権と比較してどのくらいの価値なのか。

路線価」という相続税評価を出すために毎年発表されている価格があります。
路線価は国税庁のHPで誰でも確認ができます。
そこに記載されている価格の後に「C」とか「D」とかのアルファベットが記載されていると思います。
それが借地権の割合です。

(参考)財産評価基準書|国税庁

例えば、Dの場合は借地権割合が60%、底地が40%となります。
つまり、土地の所有権価格が1,000万円だとしたら、借地権が600万円、底地が400万円ということになります。
(※実際は流通性や個別要因を考えますので、完全にこの割合で価格形成される訳ではありません。また、定期借地権の場合は残存期間に応じた価格となりますので、より複雑となります。)

また、地上権というものがありますが、これは借地権とは異なります。
違いは別ブログでまた取り上げたいと思いますが、地上権の方がより権利が強固であり、所有権に近いものだと考えていただければひとまずOKです。

借地権のメリットとデメリット

<メリット>
・価格が安い

よく、「土地の固定資産税がかからない」とメリットに謳われていますが、土地の固定資産税分よりも地代の方が高くついています。
詳述は避けますが、もともと土地固定資産税は住宅の場合は6分の1になっていますので、出費の割合はそこまで大きくありません。

なので、メリットは購入時の価格が安い】、これだけです。

<デメリット>
①地代や更新料がかかる。
②権利が不安定。
③譲渡や建替え時には地主の承諾が必須であり、承諾料がかかる。

①地代や更新料がかかる。

地代は賃料のことです。
物件情報欄に記載があると思いますので、確認しましょう。
更新料は地域の相場次第です。
相場の出し方は別ブログで詳述します。
イメージですが、一都三県で20~30坪程度の一戸建の場合、20年に一度、更新の時期に100~200万円程度支払うことになります。

(参考)借地権 承諾料の相場は?

②権利が不安定

借地権は、所有権と違って登記ができません。
正確に言うと、借地権の登記には地主の協力が必要なのですが、地主に登記するメリットが無く、義務も無いので、ほとんどのケースが登記されません。

第三者への対抗要件は「建物の登記があること」です。
借地権上の建物が登記されていれば、借地権という権利を第三者に主張できる、ということです。

そのため、建物が倒壊、焼失などすると、権利が無くなる可能性があります。
また、地代の滞納、他者への無断譲渡などの違約行為や、建物の朽廃等により、借地権の消滅を主張されることもあります。

所有権ではそんなことは起こりえませんが、借地権とはあくまで「債権」なので、要件によって消滅してしまうことがあるのです。
実際には借地権の消滅は、そんなに簡単に認められるものではありませんが、所有権と比べてとても弱い権利なのです。

③譲渡や建替え時には地主の承諾が必須であり、承諾料がかかる。

借地権は、地主の承諾無く、第三者に譲渡することはできません。
建替えも同様に、地主の承諾が必要です。そして、通常は承諾料が発生します。

承諾料の相場は更新料同様、別ブログで説明します。
さきほどと同様に、一都三県で20~30坪程度の一戸建の場合、譲渡承諾料は200~400万円、建替え承諾料は100~200万円程度、かかるイメージです。

しかも、地主が承諾してくれない場合、勝手に売買することができません。
その場合は、裁判所から許可を取得することができますが、手間も時間も費用もかかります。
さらに、そんな揉めている物件を買う購入者は限られます。

加えて、購入者が融資を利用する場合、金融機関からは必ず地主に対して、借地権付建物に担保を設定するための「承諾書」を求められます。
要は、地主に協力してもらわないと、購入者は融資を利用することもできないのです。

このように、「借りる」という点では借地人が保護されますが、「譲渡」「建替」などを行う場合は、地主にマウントを取られることになります。これは覆す術がありません。

したがって、地主とは長期にわたり、良好な関係を継続しなければなりません。

まとめ

借地権は購入時は安いが、長期間で見ればコストがかかるし、手間やリスクもある。

結論は、【買うときは良いけど、長期間で考えるとお勧めしない】です。

一都三県で借地権の建売などは1,000万円以上安くなっていますね。
買うときは良いのですが、結局地代や更新料、承諾料で費用が嵩みますし、何より不安定だし、色々と面倒ですよね。

一方で、定期借地権の物件は考え方によってはアリです。
特に分譲マンションでは60年とか70年とか、かなりの長期間で契約期間を設定してます。
更新が無いので期間内で元が取れるかどうか、というだけで単純ですよね。
ただし、残存期間が少なくなってくると売れなくなりますので、その点は注意が必要です。

借地権は難しいです。
営業マンでちゃんとわかっている人は、10人に1人もいないと思います。
借地権でお悩みの方は、ちゃんと専門家を見つけましょう。

借地権の物件購入を検討している方は、少しでも参考にしていただけると嬉しいです。

ではまた。