購入編

タワーマンションのコワい話

タワーマンションの価値は維持されるのか

2000年代から急速に個数を増やすタワーマンション(20階建て以上)。
2022年以降に307棟、約11万戸の完成を予定しています。
現在でも住宅の供給過剰が指摘され、2100年には日本の人口は6,400万人となることが予測される中、タワーマンションの価値は果たしてどうなっていくのでしょうか。

そもそも、タワーマンションがなぜこんなにも人気になったのか。
タワーマンションは限られた敷地で多くの住戸を分譲でき、ディベロッパーにとっては巨額の利益を生む事業です。

さらに、行政側にも利点を生み出します。
人口が増えれば住民税や固定資産税等の税収が増えるからです。
なので、行政が規制を緩和し、再開発を謳ってタワーマンションを誘致することが各地で行われてきました。
ディベロッパーと行政にとって儲かる事業なわけです。

いつしかタワーマンションはある種のステイタスとなりました。
タワマンの上層階に住むことが憧れのような価値観、風潮が蔓延しています。
資産価値も高いとされ、実際に値崩れしづらく、中には分譲時から1,000万円以上値上がりする物件もあります。
共用部も充実したものが多く、コンシェルジュが出迎え、スポーツジムや屋内プールが完備された物件も見られるようになりました。

しかし、ちょっと建ち過ぎだと思ったことはありませんか。


タワーマンションが乱立し、人口が爆発的に増えたことにより、通勤ラッシュ、小学校定員超過、待機児童の増加、ビル風の発生、子供の遊び場の減少等、負の側面が少なからずあるはずですが、あまり問題視されません。

これから人口が減少し、リモートワークが進み、車が空を飛ぶ時代もくるかもしれません。
そんな中で、この林立したタワーマンションの価値は果たして維持されるのでしょうか。

タワーマンションの修繕費

国土交通省の「マンション修繕積立金に関するガイドライン(令和3年9月改訂)」によると、修繕積立金の目安(計画期間全体の平均額)は「20階未満の5,000㎡以上10,000㎡未満のマンション」が平均252円/㎡であるのに対し、「20階以上のマンション」は平均338円/㎡とされています。

70㎡で換算した場合、

■20階以下のマンション
:¥17,640/㎡
■20階以上のマンション
:¥23,660/㎡

差額は¥6,020/月もあります。
年間で約7万円、30年だと220万円程度余計にかかることとなります。

実際の大規模修繕に要する額はどうでしょうか。
通常のマンションであれば、大規模修繕費用は100万円/戸程度が目安となります。
川口のとあるタワーマンションでは1回目の大規模修繕工事が185万円/戸でした。

これは極端ですが、タワーマンションは外壁の修繕に特殊な足場が必要になるほか、共用部の占める割合が大きいため、割高になる傾向があります。
そして、大規模修繕工事は約15年周期、2回目の大規模修繕工事にはEVや配管の修繕も必要なことから、更に高額となります。

少し話は変わりますが、タワーマンションは共用部が充実している分、管理費が高い傾向があります。
例えば、屋内プールの年間維持費は3,000~4,000万円だそうです。
仮に1,000戸のマンションだとしても、年間3~4万円支払うことになります。
30年だと90~120万円程度余計にかかることとなります。

月々にすると大したことない金額に見えますが、長期的に見ると相当な金額となります。
購入時の金額も高いし、ランニングコストも高くつくのがタワーマンションです。

タワーマンションのデメリット

①災害に弱い
②子育て環境に悪い

メリットは利便性や資産価値(今は)であることは分かりますよね。
それではデメリットは何でしょうか。

①災害に弱い


被災時にエレベーターが止まったらどうでしょう。
停電時には非常用電源がある、と謳われていると思いますが、72時間が標準、しかも稼働するのは、ほとんどが1基のみです。
ちなみに、阪神・淡路大震災の時は7日程度インフラが止まったそうです。
あとの4日間はどうするのでしょうか。。

上水道についても、電力によってポンプを稼働させ、上層階へ押し上げています。
そのため、電気が止まると水も使えません。
水道が止まればトイレも流せなくなります。

では自宅ではなく避難所に行ったらどうか。
しかしながら、タワーマンションの集中しているエリアは相対的に避難所が足りないはずです。
人口密度が高いので当然です。
また、元気な人なら何とか昇り降りできるかもしれませんが、高齢者や障害を持った人は厳しいでしょう。

湾岸エリアはほとんが埋立地なので、大地震がくると液状化の可能性があります。
マンション自体は杭を地中深くまで打っているので無事かもしれませんが、地中に設置されている給排水管は破壊される可能性が高い。

東日本大震災時、浦安では仮設トイレが設置され、トイレが二時間待ちだったようです。
私も震災後に現場に足を運んだことがありますが、道路もボコボコで、車両が通れないほど隆起、沈下している箇所もありました。

その当時、湾岸エリアをはじめタワーマンション価格が軒並み下落したことを覚えています。
でも数年で反転しました。
2022年現在、既に震災前の相場より高くなっています。
みんな忘れてしまうんです。
しかし、首都圏で今後30年以内に70%の確率でマグニチュード7程度の大地震が起こるとされているのに、行政、マスコミやディベロッパーは注意喚起しないのです。
建てれば売れるから、ですよね。

②子育て環境に悪い

タワーマンションが林立するエリアでは、子どもがのびのび遊べる場所がありません。
子どもは外に出なくなり、世界が広がらなくなります。
子どもは自然に触れることによって、様々な体験をし、工夫をし、それが学びとなります。

最近、スマホを長時間見る子どもはテストの平均正答率が低いという結果が出た、という記事が日経に掲載されていました。
タワーマンションもスマホも、たかだか20年程度の歴史しかありません。
まだ研究が進んでいないようです。
将来、色々な弊害が明らかになっていく可能性は否めません。
人間は高所で生活するようにできているはずがないのですから。

また、タワーマンションには共働きで高年収のパワーカップルも多いですよね。
忙しい方も多いでしょう。
そうなるとますます子どもは自然に触れる機会が少なくなります。
近くにちょっとした公園くらいあるかもしれませんが、人口密集地なので混雑していたり、とても狭くて思いっきりサッカーなんかできるスペースも無いでしょう。

自宅でYouTubeを見たり、ゲームをする子が増えるのではないでしょうか。
それが本当に子どものためになるのだろうか、と思ってしまいます。
利便性やステイタスで得するのは親、ですよね。

まとめ

現在は華やかでステイタス、資産価値は維持され、分譲時から値上がりする物件も珍しくない。
タワーマンションはそんなポジションです。

しかしながら、これから人口減少の時代を迎え、リモートワークで遠隔地でも仕事が可能となり、交通インフラがますます便利になっていった場合、この価値は本当に維持されるのでしょうか。

現実的に可能性のある大災害のリスク、これから子育てへの悪影響や健康被害が顕在化してくる可能性だってあるわけです。

そんな中、明らかに割高なタワーマンションに住む意義が低下した場合、マンションは多くの空き家を抱えることにもなりかねません。

相続対策や投資用で購入する方も多いです。
実際に資産価値が高いですから。
ただ子育て世代が無理して住むにはリスクがあるのかな、と思ってしまいます。
ローンさえ組めてしまえば、「月々の支払い」にしか目が行かない方も多いですから、営業に乗せられて購入してしまうケースも多いでしょう。

華やかなマンションパビリオンや営業マンの言いなりに購入するのではなく、タワーマンションの負の側面やリスクを検討したうえで、冷静に判断しましょう。

ちょっと偏った記事になってしまったかもしれませんが、でもやっぱりコワい話ですよね。参考にしてもらえたら嬉しいです。

ではまた。