各種承諾料の相場
①譲渡承諾料
⇒借地権価格×10%
②建替承諾料
⇒更地価格×3%
③条件変更承諾料
⇒更地価格×10%
・更地価格
⇒路線価×1.25
・借地権価格
⇒更地価格×借地権割合
上記はあくまで目安です。
承諾料は当事者同士の合意により取り決められます。
金額を定めるものが特に無いため、適正なのかどうか、判断することができずに困ることも多いのではないでしょうか。
この割合は、借地非訟手続きの際の目安ともされています。
①譲渡承諾料
借地権価格×10%
借地権を第三者に譲渡する際は、あらかじめ地主の許可が必要とされています。
通常、その際には承諾料が発生します。
借地権価格を判断する際には、路線価や近隣公示価格、実際に売却する価格を基準とすることが多いです。
路線価を基にする場合、次のように考えます。
路線価は、国税庁のHPで調べられます。
⇒ https://www.rosenka.nta.go.jp/
仮に、対象地;100㎡が「400C」と書いてある道路に面しているとしましょう。
これは、「400千円/㎡、借地権割合:70%」を意味します。
100㎡×40万円×1.25=5,000万円(更地価格)
5,000万円×70%=3,500万円(借地権価格)
3,500万円×10%=350万円(譲渡承諾料)
となります。
ちなみに、「1.25」を乗ずる理由ですが、路線価が「公示価格×80%」を目安とされているためです。
②建替承諾料
更地価格×3%
建をの増改築する際には、あらかじめ地主の許可が必要とされています。
通常、その際には承諾料が発生します。
また、この「増改築」とは「建替え」も包含されます。
上記の例だと、以下の通りとなります。
100㎡×40万円×1.25=5,000万円(更地価格)
5,000万円×3%=150万円(建替承諾料)
料率は、地主がどれだけ不利益を被るか、によって異なります。
耐用年数のより長い建物の方が、より長期間借主が保護されることとなり、
料率が高くなる傾向にあります。
例えば木造の簡易なものであれば3%より低い場合もありますし、
RC等の堅固な建物の場合は3%を超えるケースもあるでしょう。
③条件変更承諾料
更地価格×10%
ここでいう条件変更とは、「非堅固建物」から「堅固建物」を変更するような場合です。
例えば「木造建物」から「RC建物」へ変更するような場合がこれにあたります。
旧法借地権(平成4年7月31日より前)では、この「堅固/非堅固」を明確に区別しています。
地主からすると、建物の耐用年数が長ければ長いほど、土地を貸し続けなければならない状態が継続するわけです。
そのため、より高い承諾料が要求されるわけです。
上記の例だと、以下の通りとなります。
100㎡×40万円×1.25=5,000万円(更地価格)
5,000万円×10%=500万円(条件変更承諾料)
借地非訟とは
借地非訟とは
上記のような承諾料の相場があるものの、法外な承諾料を要求してくる地主も少なくありません。
例えば「売買代金の20%」とか「坪〇万円」とか、全く別の算出方法を採用している場合もあります。
承諾料はあくまで当事者同士の合意によるものですし、借地人は法律上、地主の承諾が無いと譲渡や建替えを行うことができません。
地主が正当な理由なくこの承諾を拒んだ場合、借地人は裁判所に代諾許可を求めることができます。これを借地非訟手続きと言います。
非訟とは、訴訟手続きによらずに、簡易な手続きで処理する手続きのことです。裁判所は当事者の主張に拘束されず、その裁量によって決めることができます。
借地非訟の問題点
しかし、『地主と揉めても裁判所から許可を取得すれば問題ない』とはなりません。
地主と揉めている借地を購入することはやはりリスクです。借地権は譲渡や建替えの際に必ず承諾が必要ですし、更新時期には更新料の支払いが生じることがあったり、地代が増額請求されることもあるでしょう。
つまり、借地は揉める要素が多いのです。更に、借地権は債権で、とても不安定な権利です。地主との良好な関係を継続することが、価値を維持するために最も大切だと言えるでしょう。
担保設定に関する承諾書
また、借地権の購入等で融資を利用する場合、金融機関は必ず担保設定に関する承諾書(実印押捺、印鑑証明書付)を地主に求めてきます。
内容は各金融機関によって異なりますが、金融機関は金銭債権の担保がマストですので、主に以下の二点です。
①延滞⇒差押⇒競売等により別の第三者が借地権を取得した際に、その譲渡を承諾すること。
②地代の延滞が継続した際に、借地契約を解除する前に金融機関にに通知し、代払いする機会を与えること。
金融機関にとっては、借地権の消滅は担保の消滅を意味しますから、生命線なわけです。なので、この承諾は金融機関にとって必須のものです。
しかしながら、この承諾を裁判所に求める法制度はありません。あくまで当事者同士の話し合いで決着をつけなければなりません。
つまり、地主と揉めてしまってはこの金融機関に対する承諾に協力してもらえず、この借地権を担保に融資を組むことができなくなる可能性があるのです。
おわりに
このように、譲渡や建替え、融資利用のときは地主の承諾が必要になります。
つまり、これらの場面では、地主がかなり有利な立場と言えます。
悪く言えば、言いなりに事を進めるほかありません。
承諾料はあくまで目安です。
地主によって法外な金額を請求されることもありますし、
地主が借地権を購入したい場合は、あれこれ第三者への譲渡を妨害されることもあります。
そのため、長年にわたる良好な信頼関係が、こういった場面でものを言います。
逆に、地主との関係が悪い状態だと、譲渡や建替えの際にうまくいかなくなってしまうことが多いのです。
もし、仲介者として地主と借地人との間に入り、交渉を進める場合は、それぞれの言い分やこれまでの経緯、ものの考え方に注意しながら、調整をしていく必要があります。
少しボタンを掛け違えただけで、話がこじれることがいくらでもあります。
それだけに、とても慎重な交渉が要求されます。
借地権は難易度が高いですが、奥が深く、ハイレベルな知識や交渉力が必要なやりがいのある仕事に出会うことができます。これからも、借地については様々な角度から発信していきたいと思っています。
少しでもお役に立てれば嬉しいです。
ではまた。