営業編

私道の通行・掘削承諾 民法改正

2023年4月から民法が改正される予定です。
その中に、ライフラインの設備の設置権・使用権が明文化されます。

現行は、ライフラインの明文化された規定がありません。
そのため、他人の土地(私道を含む)を使用しなければライフラインを引くことができない土地所有者は、現行の相隣関係や下水道法第11条を類推適用により、他人の土地を使用することができると解されています。

通行掘削承諾書とは

私道に面し、他人の所有する私道を経由しないとライフラインを引き込むことができない土地を売却する場合、「私道の通行掘削承諾書」が必須となります。
私道所有者の承諾がないと、車両の通行やインフラの引込工事を妨害される可能性があるためです。
通行掘削承諾書が無い場合、具体的には以下の2つが問題となります。

①建物建築業者、配管工事業者が、工事を請け負ってくれない。
(トラブルが発生するリスクがあるため)
②金融機関が融資をしてくれない。
(私道持ち分が無い場合)

原則、インフラ事業者は、供給の申込を受けた場合に拒否することができない、と定められています。
供給する条件のなかに、「インフラを引く場所に地主や家主などの利害関係人がいる場合は、事前にその承諾を得ておかなければならない」と規定があります。

私道の持分を持っている場合、民法の規定で、「各共有者は持分に応じた使用をすることができる」と定められています。
共有地ではないが、私道が数名の所有地により構成されて一体となっている場合にも、この規定を類推適用できると考えられています。

私道の通行掘削承諾書の、一般的な内容は以下の通りです。

・私道の無償通行(車両を含む)
・配管を引くための私道の掘削
・互いに土地を第三者に譲渡した場合、承諾書の内容を承継する

私道所有者は、承諾書の署名捺印に応じる義務はありません。
なので、承諾書の取得にはそれなりに労力がかかります。
取得できない可能性も十分にあります。
(取得するための重要なポイントは別ブログで解説します)

今回、民法が改正され、ライフラインの設備の設置権・使用権が明文化されます。
これにより、現行と比較して、関係者の理解が少しは得られやすくなるのではないか、と思っています。

ではどう変わるか、簡単に解説します。

ライフラインの設備の設置・使用権

改正法により、明文化されるのは以下の通りです。

(1)設備設置権
他人地(私道を含む)を経由しないとインフラを引き込むことができない土地所有者は、【必要な範囲内で、他人地に設備を設置する権利を有する】と明文化されます。

(2)設備使用権
他人管(私設管)を使用しなければ、インフラを引き込むことができない土地所有者は、【必要な範囲内で、他人管(私設管)を使用する権利を有する】と明文化されます。

(3)場所、方法の限定
他人地または他人管にとって、最も損害の少ないものに限定。

(4)事前通知の義務
他人地または他人管の使用の際は、あらかじめその目的、場所およびその方法を、その所有者に通知しなければなりません。

(5)償金、費用負担
他人地のまたは他人管の使用に伴い、一時的あるいは継続的にその土地所有者に損害を生じさせた場合、償金を支払うことが義務付けられます。

ただし、設置権や使用権がある場合であっても、それを拒まれることもあります。
民法は自力救済を禁止していますので、あくまでその所有権に基づいて、妨害排除の判決を裁判所に求めることになります。

まとめ

以上のように、インフラを引き込むための、他人地や他人管の使用をする権利が明文化されます。
今までは民法の通行権や、排水の設置・使用権しか明文化されていませんでした。

しばらくは、今まで通り、通行掘削承諾書の取得が求められると思いますが、明文化されることにより、他の私道所有者・設備所有者からの理解が得やすくなるものと思います。


また、トラブル、妨害があっても早期解決が図れるようになり、事業者や金融機関の対応も変化していくかもしれません。

不動産の売却にとって、私道の掘削承諾書の取得は最も大変な業務の一つです(特に持分が無い場合)。
「無償で承諾書にサインしてくれ」と言われたら構える人が多いことは、想像つきますよね。
これを売却時に軽く考えている不動産仲介業者がいかに多いことか。

別ブログで、通行掘削承諾書の取得に際するポイントを解説しますね。
少しでも参考にしていだければ嬉しいです。

ではまた。