売却編

任意売却ってお得なの?

任意売却とは、住宅ローン等の借入金の返済ができず、売却しても借入金が残ってしまう場合において、金融機関の同意を得て、売却することを言います。

債権者は、ローンの返済が滞ったとき、借入金を回収するために裁判所に申立をして、競売という手続きを取るのが本筋です。しかしながら、競売は時間がかかり(半年くらい)、費用もかかります。

競売は強制売却です。これと比較して、「任意売却」と呼ばれます。

任意売却の場合、「市場に公開することにより、市場価格に近い価格で売却できる」「競売よりも早く手続きを進めることができる」等のメリットがあります。

それでは市場に出ている任意売却物件は、割安なのでしょうか。
まずは任意売却物件の特徴から見ていきましょう。

任意売却物件の特徴

①契約不適合責任免責
②境界非明示
③債権者の同意が必要
④物件の資料が揃っていないことが多い
⑤残置物があるケース

①契約不適合責任免責

契約不適合とは、いわゆる欠陥・不具合のことです。
通常、不動産売買では、売主に契約不適合責任があります。買主は、引渡し後3ヶ月以内であれば、購入した不動産に欠陥があったとき、売主に対して、その修補を請求できます。

ところが任意売却の場合、売主に資力がありません。
そのため、物件に欠陥があったとしても修補ができません。よって、契約不適合責任は免責(売主は欠陥があったとしても責任を負わない)とされます。

つまり、買主は物件の隠れた欠陥・不具合のリスクを負います。

②境界非明示

通常の不動産売買では、売主に境界の明示義務があります。
境界とは、隣地との境のことであり、境界が決まってはじめて、対象不動産(土地)の範囲が明確になります。これは通常、売主が、土地家屋調査士・測量士等に委託して行います。

ところが任意売却の場合、①と同様に売主に資力がないため、境界確定する費用が捻出できません。また、明示した境界に相違があった場合であっても、責任を取るだけの資力がありません。

つまり、買主は境界トラブルのリスクを負います。また、建物を建築する際はその敷地の境界標の設置が必要のため、その費用及びリスクを負うことになります。

③債権者の同意が必要

「売買代金ー売却経費」<「残債+遅延損害金」の場合、
債権者は損切をしなければならなくなります。債権者は多くの場合が金融機関であり、損切には本部の決裁が必要となります。

そのため、販売価格で買付を入れたとしても、債権者の同意が取れないケースが稀にあります。通常は、債権者も決裁の見込みをもって、販売価格を決定しますので、実際にここで躓くことは少ないですが、白紙になる可能性があることは念頭に置いておきましょう。

また、決済の直前になって、他の債権者から物件に差押が入ったりするケースもあります。そのため、所有権移転までは、気が抜けません。

④物件の資料が揃っていないことが多い

売主は、不本意で売却をすることがほとんどです。また、お金が無いために、物件は荒れていることが多く、物件の資料が整理されて揃っていることは殆どありません。

更に、売主は投げやりになっていることも多く、物件に関する告知(不具合やトラブル等)も確りとなされない可能性があります。特に所有者が破産している場合は、破産管財人が売却手続きを行うため、所有者と接触する機会を持つことができず、告知すべき事項があったとしても、それを伝えてもらえないリスクがあります。

⑤残置物があるケース

物件に残置物があるケースがあります。
この場合は処分費用が買主負担になりますので、その費用を見込む必要があります。

窓口の不動産業者が見積を取っていると思いますので、それを確認しましょう。

任意売却物件は割安なのか

結論

リスクはあるが、割安であることが多い。

上記のようなリスクを加味した価格設定がされますので、通常の物件と比較して、割安であるケースが多いです。

ただし、リスクの大小が物件によりけりです。例えば区分マンションが売買対象であれば、起こるとしても設備の不具合程度でしょうから、リスクは小さいと言えます。一方、「築古の中古戸建で私道に面している物件」等はリスクが大きい。建物に雨漏り・シロアリがある、境界や私道のトラブルがある、等、影響度の大きいリスクが潜んでいる可能性があります。

そのため、窓口となっている不動産会社の調査能力は超重要です。リスクを想定し、できる限りの調査を行って、不確定要素を減らす努力をしましょう。

また、任意売却物件は割安であることが多いのですが、必ず安いわけではありません。
なぜなら、販売価格は、金融機関の意向が反映されるためです。例えば、不動産価格が高い時期に購入した物件が、その後下落し、残債を割ってしまうこともよくあります。その場合、金融機関の意向次第で、相場よりも高い金額で市場に出ていることがあります。リスクだけ大きく、価格は相場又はそれ以上、ということもあり得るのです。

債権者は、ときに経済合理性を欠く価格設定、意思決定を行う場合があります。つまり、売れる訳がないくらいに高い価格で販売したり、適正な金額の買付を拒否して競売手続きに移行したり、といったことが現実に起こります。
そのため、任意売却だからといって、割安と決めつけてはいけません。しっかりと相場を確認しましょう。

任意売却物件の注意点

任意売却物件を購入しようとする場合、売買代金とは別途、引越し代を請求されるケースがあります。これは、安易に応じてはいけません。
なぜ、売買代金と別途で引越し代が請求されるか、というと、債権者が、引越し代を売却経費として認めないケースが多いためです。要は、債権者にバレないように、裏で引越し代を出してくれ、と言われているということです。これは債権者を欺く行為となりますので、止めましょう。

また、区分マンションの場合、売主が管理費等を滞納しているケースが多いです。区分所有法により、管理費等の滞納額は、売買があった場合、その買主が負担することになります。そのため、購入の際には、必ず管理費等の滞納有無とその金額を確認しましょう。(固定資産税等は買主に承継されませんので、安心してください)

おわりに

任意売却物件は割安であることが多いので、あとはどれだけ調査をしっかりと行うか、が重要なポイントとなります。そのため、不動産会社の選定は重要です。

また、指値(値下げ交渉)が通る可能性も十分にありますので、よく担当者と相談して買付を入れましょう。ただし、割安な物件であれば、買付が重ねて入ることもよくありますので、満額で買付を入れないと買いそびれてしまう可能性があります。そのあたりの見極めも必要です。

レベルの低い不動産会社の担当者だと、「リスクの顕在化がされない」「価格交渉がうまくいかない」「買主の手続き上のリスクがヘッジされない」等の懸念があります。ただでさえリスクの高い不動産取引なので、信頼できる担当者に任せましょう。

上手く上記のようなことを理解し、適正なリスクを取って、良い物件が買えたら良いと思います。そのために、普段から信頼のおける不動産屋さんと付き合っておきましょう。

参考にしていただけたら嬉しく思います。
ではまた。