売却編

建物解体に知っておくべきこと

建物を解体する機会など、一般の方であればそんなに経験することではありません。
『壊すだけなんだから、安い方が良いに決まってる』と思われるかもしれませんが、業者の選定はとても重要です。

また、近年アスベスト関連法令が改正されました。
アスベストへの対応がより厳しくなりましたので、注意が必要です。

解体費用はどのくらい?

相場

木造⇒5~6万円/坪
鉄骨造⇒7~8万円/坪
RC造⇒10万円/坪

上記の金額はざっくりです。
道路付や建物の状況、アスベストの有無や地中埋設物の有無等によって金額は変わります。

解体工事業者の利益率は多くて20%ほど。
大体が10~15%ほどになるそうです。
内訳は下図のイメージです。

割高になるケース

価格形成の要因は以下の二つです。

①人件費に影響を与えるもの
⇒手壊しの範囲(道路幅、隣家との距離、高低差等)

②産業廃棄物処理費用に影響を与えるもの
⇒運搬車両の大きさ、処分場までの処理、発生する廃棄物(アスベストや混合廃棄物は高額)

この二点が解体費用内訳の約7割を占めます。

①について、重機を使うことができない場合(道路が狭い、隣地と近すぎる場合、宅地内に重機が入るスペースが無い、高低差がある)、手壊しになります。
また、交通量の多い通りだと警備員の配置が必要となり、これもコストアップに繋がる要因のひとつです。

②について、通常4トン車を利用するのが一般的ですが、道路が狭くて2トン車しか入れない場合や、地方などで処分場が近くに無い場合、アスベストがある場合には最終処分場に持ち込まなければならず、こういったケースだと割高になります。

混合廃棄物とは、分別されていない産業廃棄物のことです。
木は木、コンクリートはコンクリートで分別されおらず、混ざってしまっている場合、2~4倍くらい割高になってしまいます。

また、地中埋設物(ガラ、井戸、浄化槽、杭など)が出てきた場合には、その分が追加費用となります。

なお、解体費用は年々上昇しています。
下がる見込みはありません。
産業廃棄物の処理施設が不足しているためです。

また、人件費の上昇や、法令改正によりアスベストが発見されることが増えますので、これら点も価格上昇に繋がっていきます。

アスベスト関連法令の改正

2021年4月より、大気汚染防止法の一部を改正する法律が施行されました。

①対象建材が「レベル1、レベル2」から全ての石綿含有建材に拡大
②解体時の石綿含有建材事前調査結果の届出
有資格者による、石綿含有調査の義務化(2023年10月~)

①対象が全ての石綿含有建材に拡大

レベル1は最も飛散性の高いアスベストのことです。
あの吹付になっているモコモコしたやつですね。
レベル3は飛散性の低いものです。
これが対象に含まれることになりました。
一戸建などによく使われている「成形板」や「外壁仕上塗材」に含まれていることが多いです。
これにより、今後木造一戸建でもアスベスト処分費用がかかるケースが増えるでしょう。

余談ですが、飛散性が低いものでも、割れれば飛散します。
レベル1よりもアスベスト含有率が高い建材であっても、レベル3に属していることがあります。
なので、『レベル3だから安心』、ということでは決してありません。
レベル3でも危険度は意外と高いことがある、ということを認識しましょう。

また、レベル3のアスベストを含有する建材は、割と最近まで使われています。
2005年くらいまで利用されていたものもあるようです。


2006年9月以降に着工された建物については、アスベスト含有建材は無しと判断して、まず間違いないでしょう。それ以前に着工された建物には、建材にアスベストが含まれている可能性があります。

30坪程度の一戸建であっても、もし外壁に含有されて場合は量が多いので、それなりに処分費が高額になります。屋根材や軒下材だけでしたら20~30万円程度で済むかもしれませんが、外壁の塗装材に使われていたら、100万円程度の増額の可能性もあります。

『木造だから大丈夫だろう』というのはもう昔の話です。
想定外の出費を避けるように、早めに検査を行いましょう。

②石綿含有建材事前調査結果の届出

解体工事に着手する前に、建材にアスベストが含有されているかどうかを調査しなければならなくなりました。

外壁や屋根などの検体を採取し、検査機関で調査をすることになります。
30坪程度の一戸建で1~2か所程度が必要となり、検体費用で5~10万円程度かかります。
また、検査に要する期間で1週間程度要します。
更に、含有されていた場合は処分に2週間程度余分にかかりますので、今後は解体機関にも要注意です。通常よりも1カ月程度長くかかることも想定されます。

③有資格者による石綿含有調査の義務化

②の調査は、有資格者しか行うことができない法令となります。
調査ができないと解体工事ができませんので、解体工事業者は必ず取得しなければならなくなります。

業務上の注意点

業者の選定は重要です。
段取りや近隣対応が悪かったり、最初安くても追加で費用を請求してきたり、質の悪い業者も数多くいます。
以下のポイントに注意しましょう。

トラブルを防ぐ5つのポイント

①安さだけで工事会社を選ばない。
②契約書の締結を必ず行う。
③契約前に撤去範囲が正しいのか、現地確認を行う。
④追加費用発生時には、事前協議を行う。
⑤工事会社の違反歴や対応面の確認。

トラブル多いのが、「追加費用」と「近隣トラブル」です。
安さだけで選んでしまうと、こういったトラブルに巻き込まれる可能性があります。
対応面や口コミのチェックを行ったり、大手不動産仲介会社に売却を依頼している場合は、そこの提携先を紹介してもらうようにしましょう。
自分でネットで探し、値段だけで選んでしまうのは、トラブルの元です。

撤去の範囲はなるべく現地で打ち合わせを行った方が無難です。
特にブロック塀などについて、どこまで壊すのかを明確にしておかないと、後で余計な費用がかかってしまいます。仕上がり時の土地のならし方や土留めの処置などについても打ち合わせておきましょう。

追加費用はどんな業者でも起こりえますが、地中埋設物等が出た場合は必ずすぐに連絡をもらい、現場で確認する機会を与えてもらうべきです。
しかしながら、地中埋設物が出てくるのは工事の最終段階のことが多く、重機を早く次の現場に移動させたいのが業者の事情としてあります。
何か出た場合は早急な現場確認を行わないと、余計な費用がかかりますので、その点も理解しておきましょう。

まとめ

・費用と工期に注意
・業者の選定は慎重に

アスベスト関連法令の改正により、今までよりもアスベストが発見されやすくなります。
見込んでいた費用よりも大幅にコストアップするリスクが増え、更に工期も通常より見込んでおかなければならなくなります。

こういったことは事前に把握しておきたい事実ですが、ちゃんと説明してくれる営業は少ないでしょう。

私自身、いろいろな解体業者に依頼をした経験がありますが、質の悪い業者だと本当にコワいです。
近隣からトラブルを持ってきたり、大した量でも無い地中埋設物で余計にお金を取ろうとしてきたり、色々あります。

私ではないですが、壊す時期を間違えて、所有者の大切な物が残っている状態で壊し始めたり、対象と違う建物を壊してしまったケースも周りで聞いたことがあります。
嘘のような話ですが、事実です。

何においても、仕事はちゃんとやってくれる人に頼むのが一番です。
個人的には費用はその次だと思います。

少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。
ではまた。