売却編

空き家の3,000万円特別控除

不動産を売却したとき、その利益に対して譲渡税がかかります。
譲渡税とは、「売却代金>取得費」のとき、取得費を超過する分に対して課される税金です。

ところが、何十年も前から所有していた不動産の取得費が分かる資料(不動産売買契約書等)が保管されているケースはほとんどなく、又は地価が現在と比較してかなり安い等、利益分が大きくなり、多額の税金が課税されることも少なくありません。

空き家の3,000万円特別控除とは、被相続人の死亡により空き家になった不動産を相続人等が売却した場合に、譲渡所得(利益分)から3,000万円(ケースにより、2,000万円)を控除することができる制度です。

譲渡税の長期税率(5年超所有)は20.315%です。
つまり、譲渡所得が3,000万円を超えるケースにおいては、約609万円を節税することができます。

適用要件が複雑であり、何点か注意点があります。
以下をよくご参照ください。

適用要件

適用期間

□相続発生日から、4回目のお正月を迎えては×
かつ
□2027年12月31日までの譲渡

相続した家屋

□相続開始直前において、被相続にが一人で居住していたものであること。
⇒ただし、以下①及び②を満たせばOK
①被相続人が要介護又は要支援認定を受け老人ホームに入所し、かつ相続開始直前まで老人ホームに入所。
②被相続人の老人ホーム入所時から相続開始直前まで、その家屋を誰も使用していないこと。
□1981年5月31日以前に建築された建物(区分所有建物は適用外)
□相続時から売却時まで、その家屋を誰も使用していないこと。
□相続により土地及び家屋の両方を取得すること。

譲渡価額等

□1億円以下であること
※売却代金ではなく、固都税等の清算金等のすべての収入を含む点に注意。
※共有の場合、持分ではなく全体で判定。
□引渡しの翌年の2月15日までに、家屋を取り壊すか又は耐震リフォームすること
※解体は買主でもOK。ただし、売買契約で約定すること。

控除額

相続人1人につき3,000万円
※相続人が3人以上の場合は1人につき2,000万円

他の特例との関係

・自己居住用財産の3,000万円特別控除又は買い替え特例のいずれかとの併用可能
※ただし、合わせて3,000万円が上限。
・住宅ローン控除と併用可能
・取得費加算とは選択適用

つまり、「独居であったこと」「相続から売却時まで、空き家であること」が必要です。また、建物の解体(又は耐震リフォーム)が必須となる点には注意が必要です。

賃貸に供したり、誰かが居住してはいけません。
また、賃貸併用住宅で、貸家部分に賃借人がいる場合も適用できません。完全な空き家でないと×です。

建物解体は買主でもOKですが、万が一、買主が解体をしない場合はトラブルになります。したがって、売主側で建物解体は行うべきです。

適用を受けるための手続き

まず、空き家の所在する市区町村で空き家の確認書を発行してもらう必要があります。発行まで1ヶ月ほどかかる場合もあるので、早めの申請が必要です。また、必要書類が多いので、紛失しないように、予め準備しておく必要があります。

確認書発行のための必要書類

□(A)被相続人居住用家屋等確認申請書
□(B)被相続人の除住民票の写し
□(C)当該家屋の取壊し時の相続人の住民票の写し
□(D)売買契約書の写し
□(E)当該家屋の閉鎖事項証明書(未登記の場合は解体工事の請負契約書の写し)
□(F)以下の書類のいずれか
・電気ガスの閉栓証明書
・水道の使用廃止届出書
・宅建業者による広告(空き家で取壊し予定である旨が記載されているもの)
□(G)取壊し時から敷地等の譲渡時までの当該敷地等の使用状況が分かる写真

確認書の交付を受けた後は、譲渡翌年の確定申告時期に、以下の書類を添付して申告します。

税務署に提出する書類

□被相続人居住用家屋等確認書
□確定申告書
□譲渡所得の金額に関する計算の明細書
□登記事項証明書等
□売買契約書の写し

老人ホームに入所していた場合

□(A)要介護又は要支援の認定を受けていたことを証する書類(介護保険の被保険者証等)
□(B)老人ホームの入所契約書等、相続開始の直前において老人ホーム等に入所していたことを証する書類
※「老人ホーム等」に該当するかどうか、規定があるので詳細は税務署へご確認ください。
□(C)以下の書類のいずれか
・電気、水道又はガスの契約名義人及び使用中止日(閉栓日など)を確認できる書類
・老人ホーム等が保有する外出、外泊等の記録

最後に

空き家の3,000万円控除の適用要件は複雑です。また、提出書類も多岐にわたります。適用できれば減税額が大きいので、入念な確認が必要です。

売却を依頼する不動産仲介会社がこの制度を知らないようでは話になりません。税務申告なので、具体的な手続きは本人又は税理士によるところが大きいですが、売却のスケジュールや段取りを組むのは不動産仲介会社の役目です。信頼できる不動産仲介会社の担当者に依頼するべきでしょう。

『売ってから考えればいいや』ではなく、事前の段取りが肝要と言えるでしょう。

ではまた。